緑内障手術 緑内障手術
 

緑内障手術 点眼剤で眼圧が下がらず、視野障害の進行が認められるときに手術療法

緑内障手術日本では40歳以上の日本人の6%近く、約400万人の方が緑内障と診断されています。
緑内障は必ずしも高眼圧でなくても発症し、完全に治療する方法はなく、眼圧を低く抑えることによって病気の進行速度を遅くすることが可能です。薬物治療などで眼圧が下がらず進行する場合は、眼圧を下げる手術をおこないます。

視野障害の進行は以下のとおりです。

(1)進行初期
眼の中心をやや外れたところに暗点(見えない点)ができ自分自身で異常に気づくことはありません。

(2)進行中期
暗点が拡大し、視野の欠損(見えない範囲)が広がり始めます。しかし、この段階でも片方の眼によって補われるため、異常に気づかないことが多いようです。

(3)症状後期
視野(見える範囲)はさらに狭くなり視力も悪くなって、日常生活にも支障を来すようになります。さらに放置すると失明に至ります。


手術療法、治療方法

眼圧の正常値は10~21mmHg(ミリメートル水銀柱)で、21mmHgを超えると高眼圧といいます。
眼圧が高くなるのは、房水の産生と排出がアンバランスになるためです。視神経の異常(視神経乳頭陥凹ししんけいにゅうとうかんおう)では、視神経がつぶされた状態になります。高眼圧により視神経が萎縮します。
また眼圧が正常でも、視神経が圧力に耐えられない場合に視神経に異常が起きるとされています。緑内障には多くの病型があり、とくに眼圧が正常範囲のタイプ(正常眼圧緑内障せいじょうがんあつりょくないしょう)が日本人に多いことがわかっています。
 緑内障の場合、正常値の21mmHg以下なら心配ないというわけではなく、乳頭陥凹の状態や視野障害の状態を加味して判断する必要があり、障害の進行が停止するレベルまで眼圧を下げる必要があります。眼圧は季節や時間帯によって変動しますので、それらを含めて眼圧の基本値を把握することが大切です。

具体的治療方法

緑内障の手術は、点眼薬やレーザー治療が無効であったときに行います。緑内障の手術を行っても、視力や視野が回復するわけではありません。手術の目的は、眼圧を下げることにより緑内障がさらに進行してしまうのを防ぎ、失明を予防することです。

線維柱帯切除術 濾過手術(トラベクレクトミー)

術後の眼圧を定期的に測定し、安定するまでケアすることが必要となっており、低眼圧の際は圧迫眼帯をするなど、また高眼圧の際は眼球のマッサージをするなどそのときの状態に適したケアを行うことが必要です。
隅角癒着解離術は、術後数日の目の様子を観察し、再び癒着してしまうことを防ぐ目的で、解離部の周辺虹彩にレーザー治療を行うことがあります。
眼内と結膜(白目)下の間にバイパスを作成して、眼内の水を結膜の下に作成した場所にしみ出させます。(眼圧下降には最も効果が期待)
上瞼に隠れる上方の結膜を使用し手術直後より眼圧が安定するまで眼球マッサージやレーザーによる縫合糸の切開、結膜の再縫合などさまざまな治療が必要です。
眼圧の推移や傷の癒着をみながら、可能な限り最適な時期に、傷を縫った糸を切る処置(レーザースーチャライシス)を行います。この時期が遅すぎると眼圧が高くなり、早すぎると術後に極端な低眼圧になってしまいます。

線維柱帯切開術(流出路再建術(トラベクトーム)=眼内の排水管の組織を切開して、眼内の排水を良くする手術)

術後のメンテナンスや合併症の危険性が比較的少なく、安定するまでのケアは必要ですが、術後の出血が止まり、視力が回復するのを待つ必要があります。
効果は線維柱帯切除術より低いとされていますが、ある特定の緑内障や若年者には有効な手術です。
手術直後には必ず眼内出血が見られ、いったん視力が落ちますが数日で改善することがほとんどです。
線維柱帯切除術にくらべてメンテナンスや合併症が少ない安全な手術です。

レーザー虹彩切開術(LI)

原発閉塞隅角緑内障等の急性緑内障発作を起こした場合や、発作を起こす可能性の高い眼の場合におこなわれる治療法です。
レーザーで虹彩の根部に小さな穴を開けて、房水の通り道を作ります。過去にはよくおこなわれていた治療法ですが、角間内皮への影響で将来に水疱性角膜症を起こすリスクがあるため、他の手段が困難な場合にのみ施術します。

白内障の同時手術

緑内障手術をおこなうと白内障の進行が認められます。
また、白内障手術を同時に行うことによって眼圧下降が得られるという長所もあります。
これらの理由により緑内障手術と白内障手術を同時に行うことがあります。

チューブシャント手術

緑内障チューブシャント手術は、濾過手術を行っても眼圧を下げることが難しい重篤な緑内障眼に対して行います。
眼の中にチューブを留置して房水をプレートから結膜下の眼球周囲深部に流す手術で、チューブを前房に入れる直線チューブタイプと毛様体扁平部挿入タイプがあります。

緑内障手術 合併症について

■眼内炎

手術の創より病原菌がはいり、眼内感染を起こす可能性があります。
眼内感染がおこった場合、再手術、抗生剤の投与をおこないます。
感染をおこすと最悪の場合失明してしまう場合もあるため、感染予防のためにも術前、術後の点眼は指示通り行ってください。特に線維柱帯切除術の術後は長期間の抗生剤点眼が必要です。


■高眼圧

手術時の出血、炎症などによってむしろ術後に眼圧が上がるときがあります。
眼球マッサージや縫合糸のレーザー切開などの処置を行ったり、あるいは点眼薬、内服薬で経過を見たりする必要があります。


■低眼圧、脈絡膜剥離、濾過胞漏出

眼圧が下がりすぎて眼球がひずみ、視力が出にくくなります。
特に線維柱帯切除術の術直後にみられます。
ほとんどの場合が経過観察で改善しますが、眼内の水の漏れなどが結膜より明らかなときには再縫合を行います。


■術後の視力低下、視野進行

緑内障手術の目的は長期的な視力の延命効果を狙ったもので、短期的な視力の向上が目的ではありません。
むしろ術後乱視で視力が下がったり、術直後の眼圧上昇で視野欠損が進んだりすることがあります。


■異物感、充血

線維柱帯切除術では術後も軽度の充血があり、結膜が盛り上がるために異物感を感じることがあります。


■手術は点眼麻酔で約10分

麻酔は点眼麻酔でおこないます。手術中は医師と会話もできます。痛みはほとんどなく、手術は約10分で終了し、20分ほど休んでからご帰宅いただけます。入院の必要はなく、普段通りの生活をしながら、ご家庭でゆっくり療養していただけます。


山田眼科